ITに強くなるためのチェックリスト(3):マスター管理

チェックリスト

IT に強くなるためのチェックリスト(3):マスター管理と顧客管理

前回の課題であったバックアップとともに考えたいのが、マスター管理です。江戸時代の商家は、火事のときには大福帳をまっさきに持って逃げたとも言われています。古来、顧客名簿、取引台帳が重要な資産であったことを示すエピソードです。

近年、起業家へのアドバイスとして、顧客リストを作ることが第一に挙げられるなど、インターネットマーケティングの世界でも顧客リストの重要性があらためて認知されています。顧客データベースのような、重要なデータのマスターをどこに置いて管理するか。どこがマスターで、派生・連携・更新等はどのように行うか。

消えた年金問題を始め、マイナンバーのいびつな運用など、マスターデータと相互運用性が適切に設計されていないと、システム運用は悲惨なことになります。国や地方公共団体は極めて非効率で、莫大な予算を無駄にして使い物にならないシステムを量産しています。

データのマスターをどこでどのように管理し、関係するシステムとの相互運用をどうするかを適切に把握・管理することが、IT ・システムを考えるとき、極めて重要な問題となります。

日本では名刺が重要視されていることから名刺管理サービスが普及しましたが、顧客管理や営業案件管理が伴っていなければ、名刺ばかり集めても意味がありません。本来は、CRM(Customer Relation Management)=顧客管理、SFA(Sales Force Automation) =営業案件管理、MA(Marketing Automation)=マーケティング自動化管理といったサービスも統合的に運用することが必要です。

名刺管理のサンサン、SFA最大手のセールスフォース、CRM/SFA/MAを統合したHubSpot、国産の営業管理ソフト eセールスマネージャなどが有名なところです。全体最適を考慮することなく、テレビCMにつられてこれらのサービスを行き当たりばったりに導入する企業も増えているようです。

しかし、既存の取引データ管理はどうしているのか。統合基幹業務ソフトのERP(Enterprise Resource Planning)、生産管理システム、財務会計ソフト、見積・請求管理ソフト等を使っているのか、いないのか。

こうした全体的なシステムの最適化が語られることなく、属人的に管理されるエクセルファイルも多数存在し、システムも乱立しているところに、場当たり的にソフトやクラウドサービスが導入されて、混乱している現場も多いようです。

ある集計を行うのに、基幹業務ソフトからエクセルに、エクセルから別のクラウドサービスに、コピー&ペーストを数十回繰り返して集計するなど、非効率でミスの温床になっているような状況も増えています。

クラウドサービスにデータを預けてしまって、いざという時に取り出せない、アクセス出来ないというような状況にならないかも確認しておきましょう。

特に顧客に関する情報は、古来、変わらない商売の源泉です。最も核となる顧客データベースは、自社でコントロール出来るシステムで運用することをお勧めします。

顧客管理など自社の競争力の源泉となるような重要なデータベースは自前で構築することが重要です。マスターデータデースとしてお勧めなのが、FileMaker プラットホームです。データベースとしての自由度が高く、EXCEL、CSV、JSON(JavaScript Object Notation)など、多様なデータ形式に対応し、インポート・エクスポートが可能です。

CRMやSFAのクラウドサービスを利用するだけでは、マスターデータはクラウドサービス上にあることになります。クラウドサービス事業者のクラウドサーバー上のデータベースにマスターデータがあることになってしまいます。

あくまでも、マスターデータは自社で管理することが重要です。そして、FileMaker を利用することで、データコントロールの主導権を確保することができます。DM(ダイレクトメール) の発送用ラベル印刷・伝票印刷のシステム化や、電子メールの一斉送信サービスと連携させたりすることもできます。スクリプトやAPI機能もあり、多様なサービスと連携させることが可能です。

ENWITでは、 FileMaker データベースの導入支援、開発業務も行っていますので、ご相談ください。

それでは、今回のポイントを振り返ってみましょう。

■ マスターデータ

□ マスターデータを定義して、適切に管理運用していますか

□ 顧客データベースをマーケティングに活用していますか

今回はマスターデータの重要性について、顧客データベースとその活用という点から考えてみました。市場側・需要側の鍵が顧客データベースとマーケティングでした。次回は製造側・供給側の重要なマスターデータについて考えてみましょう。

例えば、鰻屋であれば火事のときにまっさきに持ち出すものは秘伝のタレですね。 商品やサービスを生み出す上で鍵となるモノや情報です。レシピやノウハウ、図面や設計仕様書、コンテンツ(写真・音声・映像データ)、供給管理 = SCM(Supply Chain Management)など、製品製造・サービス設計という製造側・供給側からの IT 活用を考えてみましょう。

次のチェックリスト第四弾は、「クリエイティブ・生産」です。