ITに強くなるためのチェックリスト(5):全体最適

チェックリスト

IT に強くなるためのチェックリスト最終回のテーマは、「全体最適」です。少し抽象的に感じられるかもしれませんが、たいへん重要な概念ですのでおつきあいください。

現代社会は高度に専門分化が進みすぎて、全体で見るとちぐはくでトンチンカンなことが増えてしまいました。デジタル化においても、同じことが起きています。

ある分野の商品がテレビCMや新聞で喧伝され、その製品を導入すればバラ色、すべて解決!のようなプロモーションに踊らされてしまう場合があります。実際は、企業ごとの状況やビジネスの特性、社員のスキル、企業文化など、様々なことの組み合わせを考える必要があります。

前回までにデジタル化の基本として重要なテーマを取り上げてきましたが、他にも財務会計や税務会計、グループウェア、スケジュール管理、経費精算など、オフィスのバックエンド業務は多岐にわたります。

顧客管理については第3回で取り上げましたが、マーケティング、営業活動、プロモーションなどの販売する前の販売促進活動から、販売後の既存顧客へのリピート販売、クロスセル(購入された商品以外への展開)・アップセル(より上位・高額商品への展開)を含め、販売活動全体と各段階における顧客体験を考える必要があります。

そして、川上から川下まで、いまやあらゆる事業活動において、デジタル活用が重要な鍵を握っています。

事業活動はオーケストラのように
多様なシステム、サービスが導入され、IT 業界においてもシステム間の連携性、相互接続性、オーケストレーション = Orchestration という概念が重要になっています。

オーケストラの指揮者のように、個々のシステムの良さを引出しつつ、全体を調和させようということですね。会社においても、各部門が独自のシステムを導入したり、自分の仕事の仕方にこだわったり、その他もろもろの理由(人間関係、社内政治、嫉妬、相性、慣習・・・)で、部署間での情報共有が進まないことも、よくあることです。

そして、デジタル化はいろいろなことが見える化されるので、長年の慣習で曖昧にしてきた部分と向き合う必要が出てくる場合もあります。

こうした部署をまたがる問題は、経営者、情報システム、実務担当の各部門が関わるため、なかなかデジタル化が進まない要因の一つにもなっています。

よくあるパターンを考えてみましょう。

社長のデジタル化を推進しろ! のかけ声で、デジタル化対応の担当が決まります。しかし、近年のデジタルサービスはあまりに多様化しており、製品やサービスを調べ、社内の意見調整をして・・・、担当者の負担は増すばかりです。

社長や管理者が社員から提案や稟議書があがってくるのを待っていては、デジタル化の推進は遅れていきます。会議ばかりで時間を浪費してしまうことも多くなります。特にシステムを導入したけど使いこなすことが出来なかった、という経験をすると、どんどん消極的になってしまいます。

実際、有名な IT サービスは機能が豊富な分、使いこなすことが難しい傾向があります。現場の実務者に対しては、かなりシンプルな画面構成で使い勝手を良いものにしておいてあげないと、システムの利用率は下がる一方となります。

そんな課題を解決するため、エンウィットではプロトタイプ開発サービスを提供しています。市販のソフトやサービスについて調査・比較・検討するため、会議に延々と時間を費やすより、プロトタイプ=試作品のシステムを開発することで、「まずは使ってみよう・・・」という文化を醸成することが出来ます。

実際に動作するプロトタイプを作ることで、課題も明確になるし、デジタル化の敷居は圧倒的に低くなります。エンウィットのあるお客様のところでは、6年前に一つのシステムのプロトタイプ開発から始めて、そのまま業務に活用し続け、関連システムを増やし続けています。

これは、内緒というか、あまり大きな声では言えないことでもあるのですが、β版のまま、数年以上に渡り、業務で使い続けているシステムもあります。とりあえず使ってみよう、こういう場合はどうすれば・・・、ここ直そう、これを追加しよう、とやっているうちに、数年が経過して・・・。すっかり、業務システムとして活用されています。

従来のシステム開発の概念では、納期までにシステムを開発して、納品して検収して完了です。納品後は、契約に1年間の瑕疵担保責任を組み込む、あるいは保守契約を年間いくらで締結するという形態が従来の発想です。

しかし、システムは実際に業務で使う人が使ってみないとわからないことが山のようにあります。納品・検収後に、「あ、ここ直して欲しい」といったことも頻繁に起こるでしょう。従来型のシステム開発、受託請負業務契約では、また、仕様・要件を定義して、見積とって、納品を待って、検収して、という工程を踏むことになってしまいます。

エンウィットのプロトタイプ開発やサブスクリプション型システム開発サービスは、一定の金額をお支払いいただくことで、柔軟にシステム開発を継続していくことが出来るサービスです。

アナログの価値
ここまでデジタル化の重要性を説明してきましたが、アナログの価値を同時に考えておきましょう。

音楽業界では、Apple の音楽再生プレイヤー iPod と音楽配信サービスの登場で、CDが売れなくなる一方で、ライブや関連グッズの売上げは伸びています。

2000年代以降、CAD/CAM/CAE・コンピューターシミュレーションの導入が進んだ結果、最近の自動車はどこの会社も同じような顔で、個性がなくなってしまいました。

デジタル化が進めば進むほど、アナログ的なもの、人間の温もり、遊び、伝統・文化など、非合理的なものの価値が高まっていきます。

デジタル化で業務を効率的、合理的に推進するとともに、非合理的なものを取り入れておくことをお勧めします。商売は人間を相手にするものですし、ものづくりにおいても、意外と言語化出来ないもの、合理化出来ない部分に、価値が潜んでいるものです。