デジタル化で考えるべき4つの要素

フレームワーク

DX では、データ、システム、人、価値(お金)の構造と流れを見ることが重要です。デジタル社会では、データとシステムが資産となります。そして、そこには必ず人が関わってきます。

使いこなせる人材がいなければ、システムは稼働出来ません。データの流れと蓄積を適切に行わないと、データがバラバラになり、管理出来なくなります。

そして、データ・システム・人材が揃っても、ビジネス上の価値が生み出されなければ、意味がありません。全体を統合して、事業の戦略とマッチさせることが重要です。

DXの鍵となる人材、道具としてのシステムとそれを使う人材との関係、デジタル技術とのつきあい方、データの活用について、意識改革や心理的な側面から考えてみましょう。

複合的な視点を持つ

DX の成功事例が華々しくメディアで取り上げられる一方で、立ち上げに失敗してしまうケースも少なくありません。DX の成否を左右する要素には、データ・システム・人材・価値(お金)があり、これらの要素が複雑にからみあっています。

システムとデータは密接にからんでいますし、人材の IT スキルとシステムにも深い関係があります。DX とは、データ・システム・人材のマトリクスを組み合わせて価値を創出することと言うこともできます。

DX に失敗してしまう、デジタル技術への対応が遅れてしまう原因はいろいろありますが、何と言っても人材の課題が大きいでしょう。

DX 時代に活躍する人材はどのようなスキルとマインドセットを持つべきか。今回は、人材という視点から DX を考えていきましょう。

デジタル人材を活用する

DX は組織全体、関係取引先、社会との関連まで含む広大な経営課題です。当然、経営者がリーダーシップを発揮すべき領域です。

しかし、デジタル技術があまりに急速に進化したことから、多くの経営者は、IT 投資、IT 人材についての戦略的な判断基準を構築出来ていません。どうしても、IT ベンダーや情報システム部門に重要な経営課題を丸投げしてしまいがちです。

一方の情報システム部門は、比較的、若い方が担当することが多く、実務経験や経営的視点が不足しています。社内での発言力、交渉力も弱く、実務で忙しい現場の協力を得ることも難しくなります。

結果として、現場の理解も得られず、実務に最適化したシステムを構築することも出来ず、導入したシステムも使われなくなってしまいます。誰がハンドルを握っているのかわからない状態になるなど、責任の押し付け合いになる場合もあります。

年配の経営者や管理職はデジタルに弱い、若いデジタル世代は実務経験が不足している、実務の現場担当者は忙しくて新しいことに取り組んでいる余裕がない、結果として DX を推進出来る人材がいない、こういった状態が多くの組織に共通している課題です。

デジタル対応を進めていきたくても、具体的にデジタル化を推進できる人材がいないことが経営上の大きな課題となっています。

デジタル人材不足の課題解決はいろいろなアプローチがありますが、方法は次の2つに集約出来ます。

1)教育・学習という人材側から入る方法
2)システム側からのアプローチ

人材不足の解決方法

まず、教育・学習では、経営者自らが最新のデジタル技術についての理解を深めることが重要です。少なくともデジタル技術を活用することで、どのようなことが出来るのか、どのようなアプリやサービスがあるのか把握しておくことが必要です。

プログラムを書ける必要はありませんし、高度な IT スキルが必要なわけでもありません。ただ、経営者が自社に必要なデジタル技術を把握していなければ、どのような人材を採用すれば良いかもわかりません。自社で人材を育てようにも、教育方針も決められないことになります。

経営者や管理者が自ら、多様なITサービスを使ってみることも必要です。一個人として、デジタルサービスを使い慣れていけば、デジタル技術の勘所もつかみやすくなります。苦手意識を払拭して、経営者ご自身で出来るだけデジタルサービスを使ってみましょう。

エンウィットでは、経営者向けのITコーチング、ITコンサルティングも行っていますので、ご興味のある方はページ下部のリンクを参照ください。

ITサービスの多くは実際に使ってみれば、意外と簡単なことも多いと思います。というのも、従来の業務システムというのは、ぶっきらぼうというか、無骨というか、とにかく使いにくい、わかりにくいものが多かったはずです。

そういう印象を持っているので敬遠してしまいますが、最近はスマホやタブレットのアプリ、Webブラウザで簡単に操作できるシステムが増えています。のちほど解説いたしますが、クラウドサービスの API 連携、アジャイル開発など、新しい開発手法も成熟してきています。

しかし、大手の IT ベンダーやシステム開発会社は従来型の開発手法に最適化されてしまっていて、インターネット、クラウド、スマホを前提とした現代的なシステム開発手法に対応出来ていません。結果として、使いやすいシステムが必要な人の手に届いていない、という現状があります。

どの技術やサービスを学習するか

ここでキモになるのが、どの技術やサービスを選ぶかということです。デジタル技術、アプリ、サービス、OS、プログラム言語など、ヤマのように製品やサービスが存在します。どの技術を選定するのか。教育・学習方針の立て方、カリキュラムの選定が鍵を握ることになります。

例えば、デジタル技術を活用しようと考えたとき、プログラム言語の学習にチャレンジする人がいます。プログラミングの実務を体験してみることは悪いことではありませんが、プログラム言語を学ぶタイプのカリキュラムはよほど時間に余裕のある方でないとお勧めできません。

若い人の中にも、IT 業界が儲かりそうだ、かっこ良いというイメージ先行で、プログラミング教室に通う人がいますが、こういうアプローチはあまりお勧めできるものではありません。実際、一部のセミナー事業者が、「Webプログラマーになって高収入!」といった誤解を招く集客をして問題になるケースも増えているようです。

ITの世界、プログラミング技術や環境はものすごい勢いで進化しています。Java、PHP、Ruby、JavaScript、Python、Swiftなど多くのプログラミング言語が存在します。人材不足で、Ruby のプログラマが不足しているとか、一時的な需給バランスの変化で報酬が大きく変動することもあります。そして、あっという間に傾向が変化していきます。

つまり、プログラミングを学ぶ、学校に通う、資格を取得するといったアプローチでは時代に追いつかないのです。技術や道具の使い方をイチから学ぶことから始める手法は時間と費用の両面で、過大な学習コストとして負担になってきます。

新しい学習のスタイル

一般的な教育の世界でも、○○学を学ぶようなスタイルより、課題を解決することで学びを進めるプロジェクトベースラーニング、アクティブラーニングといった概念が重視されています。

課題解決に必要なスキルを機動的に学習するスタイルです。業務上の問題を発見する→課題を設定する→課題解決の方法を調べる→学習する→実装する→運用する、というサイクルを機動的に回していく実践的な学習方法が解決策となるのです。

また、コロナの影響で、世界的にオンライン学習のトレンドが加速して、オンラインで学ぶことが出来るコンテンツも急速に増えています。

自ら学ぶ意欲と行動力のある人材は、ネットを活用してどんどん新しい技術や概念を取り入れて、自らの能力を拡張しています。

一方で、オンライン学習はモチベーションを維持することが難しい側面もあり、小テストなどでゲームの要素を取り入れるゲーミフィケーションなど、多様な教育方法が登場してきています。

特にわたしが注目しているのは、コホートベースラーニングという手法です。コホートというのは、群、集団、仲間といった意味で、期間を区切って一定のグループで同じカリキュラムをこなすことで、学習効果を高めようというものです。

オンライン学習の動画と、受講者、講師がコミュニケーションをとれる学習プラットフォームも多く存在し、普及が進んでいます。

エンウィットでは、多様な学習スタイルに対応するコンテンツを用意しています。

・Kindle書籍「中小企業経営者のためのDXガイドブック」
・オンライン動画コース「DX enGene」
・リアル会場でのセミナー

オンライン動画コースは、ラーニングマネジメントシステム(Learning Management System =LMS)である LearnWorldsで構築しており、動画を中心にフォーラムでコミュニケーションと取ることができます。

“多様化する学習スタイルを活用する”

必要な人材像と教育方法

中小企業のデジタル化では、どのような人材が求められているか。以下の記事でも考察していますので、参考にしてください。