そもそも何のためのデジタル化か?
そもそもなぜデジタル化が必要なのでしょうか。便利になるから? 時代に遅れるから?
表層的な言葉のイメージに流されることなく、そもそもの原点から考えてみましょう。
昔から続くデジタル狂想曲
ここ数年、DX(=Digital Transformation: デジタルトランスフォーメーション)という言葉がメディアを賑わしています。しかし、表層的な流行を追いかけて大騒ぎするばかりで、デジタル技術の本質的な価値が理解されていることは少ないようです。
40年前のOA(オフィスオートメーション)に始まり、30年前のSIS(戦略情報システム)やマルチメディア、20年前のIT革命の時代から変わらないIT業界の構図です。AI(=Artificial Inteligence)も同様ですが、あいかわらず、メディアは表層的で派手な事象を追い、本質的な意味もわからないままに騒ぎ立てています。
IT業界の方も便乗して儲けるチャンスとしか考えていないような企業も多く、DX対応?のような意味不明なキャッチコピーの製品が乱立しています。
ユーザー企業側も本質を理解することなく、テレビCMやメディアに感化されて、営業に言われるがまま、業務の実情にそぐわない無駄な投資をしてしまっている傾向はいまも昔から変わりがありません。
少し立ち止まって、DXの本質をデジタル化のそもそも論から考えてみましょう。
デジタル技術とのつきあい方
メディアがあおっている一面はありますが、デジタル技術の進化はめざましく、社会が大きく変容しようとしていることは確かです。
デジタル技術を高度に活用することで、従来は想像も出来なかったような製品やサービス、ビジネスが次々に登場してきています。
そして、デジタル技術を活用して業績を伸ばしている企業がある一方で、デジタルは苦手で・・・。どこから手をつければ良いのかわからない。あるいは、やることが多すぎて手がまわらない。システムを導入したけど、難しすぎて使わなくなってしまった・・・。
特に中小企業ではデジタル化に対応出来る人材確保もままならず、成果も目に見えにくい状況で、DX 疲れのような話を聞く機会も増えてきました。みなさんの会社では、デジタル化にうまく対応出来ているでしょうか?
経営や実務で忙しい世代にとっては、急激に進化するデジタル技術の動向を把握することはなかなか難しいことです。
しかし、経営者や実務担当者こそ、デジタル技術を正しく理解して、適切なIT投資の判断をしていく必要があります。もはや、デジタル技術の活用は、企業の命運を左右しかねない大きな課題であり、実務を知らない若手や情報システム部門、ITベンダーに丸投げしていては、経営者としての存在意義を問われかねません。
DXの本質を考える
テレビコマーシャルに感化され、最新のSaaS(Software as Service)製品をベンダーに言われるがまま導入しても、現場は入力とデータ管理で混乱するような状況も起こっています。
DXの本質を考えて、経営者や現場を熟知している実務者こそがデジタル化を主導する必要があるのです。
日本企業が長年培ってきたアナログ的な技術、価値観、感性には、失ってはならない重要なものがあります。グローバル化とデジタル化が進行するにつれて、効率性や数値化出来る指標ばかりが優先されすぎています。
グローバル化やデジタル化への対応は重要な経営課題ですが、人間性や暗黙知、伝統文化、地域性、個性といった価値観は決して軽視されて良いものではありません。
そして、こうした懸念は、そもそも2004年にDX = デジタル・トランスフォーメーションという概念を提起したエリック・ストルターマン教授(スウェーデン ユメア大学)の論文の趣旨とも言えるものです。
ストルターマン教授は、論文においてgood life (= 良い生活)とaesthetic experience( = 美的体験)といった言葉を用いて、デジタル技術が社会にもたらす帰結を慎重に考察することを提案されています。
つまり、デジタル技術を無批判に導入するのではなく、より良い生活・美しい社会を構成するように変容していくことを提起されたわけです。
そして、わたしもこの趣旨において、DXの推進に賛同しています。決して、デジタル製品をやみくもに導入して、人間がデータ管理に追われるような本末転倒な結果にしてはいけないと考えています。
コンピュータによる管理が優先され、全体主義、管理主義が強化される社会になっていくことにも反対です。そのためにも、地域社会や中小企業のビジネスを理解し、地域に立脚した経験豊か経営者や技術者にこそ、デジタル化の主導権を握って欲しいのです。
現在のような社会状況をうけ、少しでも役に立てることがあればと思い、「中小企業経営者のためのDXガイドブック」を執筆するほか、オンライン動画の学習コンテンツ、セミナーや勉強会、ワークショップなどの各種サービスを用意しています。ページ下部のリンクからご活用ください。
デジタル化のそもそも
DX のような範囲の広い活動は、抽象的な理想論を語っているだけでは何も進みません。逆に細かなツールの使い方にはまりこんでも、「何のためにやってるんだっけ」ということにもなりかねません。
DXは、社会基盤そのものがデジタルに移行していく大変革です。根本的な部分から仕事の構造、組織文化を変容していくことが求められています。しかし、何のためにデジタル化するのかと言えば、仕事を成功させて、より良い生活をするためです。前述したように、デジタル技術を活用して、より良い社会を築いていくことがDXのあるべき姿です。
そのためには、IT の専門家に丸投げするのではなく、社会の一人一人が積極的にデジタル化に関与していく必要があります。自分の仕事や生活に関わることとして、デジタル技術を理解、判断して、活用の方法について意志決定していく必要があります。
企業においても社会においても、メンバーの一人一人がデジタル化について、自分なりの意見を言えることが重要です。
意識改革の重要性
デジタル化において、もっとも重要なのは意識改革です。デジタル技術に対する意識と行動を組み合わせてマインドをセットアップすれば、後はマインドセットが好循環のサイクルを生み出してくれます。
IT に苦手意識を持っておられる方は、最初に切り替えてしまいましょう。もはや「デジタルが苦手で・・」とか言っていられる時代ではなくなりました。「デジタルが苦手です」ということは、「仕事が苦手です」と言っているのと同じ意味にとらえられても仕方ありません。少なくとも、責任ある立場の人が口にして良い言葉ではなくなりました。
まず、意識を切り替えることが重要です。組織のリーダーとなる人が、IT について自ら学ぶ意志があること、前向きな姿勢を見せないことには、組織全体のデジタル化がうまく行くはずがありません。
“デジタル化への意識を改革する”
DX 時代はすべての企業が IT 企業になることだとも言われています。それは、誰もがプログラムを書けるようになる、という意味ではありません。要は、IT をビジネスに活用するだけのことです。
そして、ビジネスに活用するためのITスキルは、基礎的なポイントさえおさえておけば、実はそれほど難しいことはないのです。不要な先入観、難しいものだという思い込みをまずは捨ててください。
敷居は下がっている
いざ、「やってみれば意外と簡単じゃね」ということも多いはずです。そして、知っておいていただきたいのは、ITスキルは変遷しているということです。
個別のアプリやサービスの使い方など、具体的な IT スキルの多くは変化していきます。メニューやボタンの位置などの操作系が変わってしまったり、あるシステムがOSのバージョンアップに伴って使えなくなってしまって、代替方法を探して学習し直さなければならなくなる、なんてことも、よくあることです。
我々、ITの専門家でも常にアップデートし続けていないと、変化の波に飲み込まれてしまいます。既存の知識にこだわりすぎていると、新しい技術の導入や適応に乗り遅れることもあります。
日本の大手ITベンダーの多くも、新しい技術に対して閉鎖的なマインドを持っていたため、2010年代以降の、スマートフォン・タブレット・クラウド、アジャイル開発といった新しいデジタル技術による、大変革の波に乗り遅れてしまいました。
一方で、最近の新しい IT ツールは、たいへん良く出来ていて、操作性に優れたものがたくさん出てきています。結果として、どうなるかというと、次のような状況が生まれています。
ゴリゴリにコードを書くプログラマより、業務や現場を知っている人が、ローコード開発・ノーコード開発と呼ばれるアプリケーション開発のツールや生成AIツールを使いこなすことで、ビジネスの現場ではより重要な役割を担える可能性が高まっているのです。
DX 時代は、IT とビジネス、IT と業務が密接に統合された環境での勝負になってきています。つまり、新しい時代への対応という意味では 、IT に詳しいけど業務を知らないプログラマと、IT に弱いけど業務を知っている実務担当者が、同じスタートラインに立っているわけです。
これから IT に取り組む人にとって有利なツールやスキルがどんどん登場してきています。旧来の IT 技術を知らなくても、プログラミングが出来なくても、IT のメリットを享受出来る可能性が高くなっています。
なんか、そう考えるとやる気になってきませんか?
ある意味、デジタル技術の世界で下剋上のようなものが起きていると思ってください。安価なツールやサービスを組み合わせることで、個人でも大企業と戦えるレベルのビジネスを構築することが出来る時代になったのです。
零細 IT 企業である弊社、エンウィットが、アプリ事業 や IoT デバイス開発、クラウドのサービス,グッズの制作販売事業など、多様なビジネスを展開出来ているのも新しいデジタル技術を積極的に活用してきたからです。
つまり、大企業、中小企業、個人、専門家、経験者、未経験者、関係なく、これからいかに学び、成長出来るかが重要なポイントとなるわけです。
“デジタル技術の目利きがポイントに”
そこでは、どの技術、新しいツールやスキルを選択するか、その目利きがポイントです。そして、技術を活用して何をするかといったビジネスセンス、事業感覚の方がより重要になってきます。
DX enGene では、IT業界でわたしが30年培ってきたノウハウをベースとして、お勧めのツールやスキル、学び方のポイント、勘所を解説しています。そして、ITツールを活用するための基本的なマインドセットを紹介していきます。
最新の技術トレンドはどうなっているか、どのようなツールを選べば良いのか。どのようなマインドセットで、次のアクションを起こしていけば良いか。ぜひ、ご一緒にDXに取り組んでいきましょう。